セミの声が聞こえはじめたと思ったら、もう手元のスマホには「高温注意」の通知が来ている。毎年「今年も暑い」と言われ続けてきたが、2026年は少し様子が違う。日本気象協会は、梅雨明けが早く、猛暑の到来も早いとの見通しを示している。記録的な高温となった近年の夏に匹敵するレベルになる可能性もあるという。snackpost.jpに集まる最新リリースを眺めていても、かき氷・アイス各社の動きが例年より早く、かつ「ただの定番商品」では終わらない仕掛けが目立つ。今年の“ひんやり系”を、4つの視点と編集部の独り言で読み解いてみたい。
01前提が変わった、2026年の夏
これまでアイスや氷菓は「暑くなったら食べるもの」という感覚的な需要だったが、今年は気象予測の段階からその前倒しが起きている。各メーカーの夏商材投入が早まっているのも、こうした予報を踏まえた動きと見てよさそうだ。実際、赤福やお亀堂など、例年であれば本格的な夏に向けて準備するブランドが、6月のうちから次々と新商品を発表している。
02老舗が、本気で出てきた
今年特に目立つのが、地域に根づいた老舗ブランドの参入だ。伊勢の銘菓「赤福」を手がける赤福グループは、姉妹ブランド「五十鈴茶屋」のわらび餅氷を大阪・阪神梅田本店に初登場させる。仙台の老舗和菓子店「九重本舗玉澤」は、宮城のブランドいちご「ミガキイチゴ」を手がけるGRAと初めてタッグを組み、地元素材を生かしたかき氷を本店限定で出す。どちらも、単なる季節商品ではなく「その土地でしか味わえない一品」として設計されているのが特徴的だ。
余談だが、赤福本体は1707年(宝永4年)創業、300年以上の歴史を持つ。一方で夏の名物「赤福氷」自体は1961年、二見浦の海水浴客向けに考案されたのが始まりというから、老舗の中の"比較的新しい発明"だったりする。歴史と新しさが入り混じっているところが、老舗ブランドのかき氷を見るときの面白さだ。
豊橋の老舗が挑む新食感
愛知・豊橋の老舗和菓子店お亀堂が出した「あんまきアイスバー」は、冷凍庫から出して10分待つと“もっちり、とろける”食感に変化するという仕掛け。長年あんまき(餡入りロールケーキ的な郷土菓子)を作ってきた老舗が、保存方法そのものを商品体験に組み込んだ点が興味深い。
03「飲む」アイスという定番化
ロッテの「クーリッシュ」は、もはや珍しい存在ではなく定番フォーマットとして根づいている。今年は夏らしいコーラフロート味を投入し、7月13日に全国発売される予定だ。スプーンを使わず、片手で飲みながら涼める形式は、外出先や移動中にも対応しやすく、“ながら需要”を取り込む夏アイテムとして安定したポジションを築いている。
実は"起死回生の一打"だった
クーリッシュが生まれたのは2003年。当時のアイスクリーム市場は低迷期で、ロッテも苦戦していたという。ヒントになったのはアメリカ西海岸で流行していたスムージーで、それを参考に生まれたのが今の"飲むアイス"。首都圏でのテスト販売を経て、翌2004年に全国発売された。20年以上前の一発逆転の発明が、いまも夏の定番として棚に並んでいるわけだ。
「暑さ対策に効果的なグルメ」として、6割超が“ひんやりスイーツ”を選んだ
出典:楽天市場「2026年夏のトレンド予測」調査結果より
04食べる以外の“ひんやり”体験
もうひとつの動きが、アイスというジャンル自体がコラボの「素材」として扱われ始めていることだ。アパレルブランド「Maison de FLEUR」は、サーティワン アイスクリームと初めてコラボし、人気フレーバーをイメージしたポップな雑貨・ファッションアイテムを6月26日に発売する。これは食品ではなく、あくまでアイスの世界観を身につける、という提案だ。「食べる」を飛び越えて「まとう」までブランド体験が広がっているのは、2026年らしい現象と言えるかもしれない。
05編集部のひとこと
正直なところ、最初に5品の発表を並べたとき「今年もかき氷の季節か」程度の感想だった。だが背景を調べていくと、赤福の300年とクーリッシュの20年という、まったく違う時間軸の老舗・ロングセラーが、同じ夏に同じ"ひんやり"という土俵で勝負しているのが妙に面白い。猛暑予報という外的要因はあるにせよ、そこに乗る商品の作り方は一社一社まったく違う。今年の夏は、味だけでなく「どのブランドが、どんな歴史を背負ってこの一品を出したか」という視点で見ると、もう一段楽しめそうだ。
こうして並べてみると、2026年のかき氷・アイス市場は単純な「暑いから売れる」という構図を超えて、地域性・フォーマット・ジャンルの3方向に広がりを見せている。猛暑予報という前提があるからこそ、各社が早めに、かつ濃い仕掛けを打ち出しているというのが今年らしい流れだ。
まとめ
- 猛暑予報が、動き出しの早さを生んでいる。気象予測の段階から商戦が前倒しになっている。
- 老舗ブランドが「その土地でしか味わえない」商品で参入。赤福・九重本舗玉澤のような地域色の強い仕掛けが目立つ。
- 「食べる」から「まとう」まで体験が拡張している。Maison de FLEURの例は、アイスがファッションの文脈にも広がったことを示す。
掲載情報は記事公開時点のものです。販売店舗・期間・気象予測の内容は、各社公式情報・気象機関の発表で最新版をご確認ください。
